メガネユーザーが双眼鏡で失敗する理由
メガネをかけている人が双眼鏡を買って、最初に覗いたときの感想として多いのがこれだ。
「視野の周りが黒く欠けて、丸い穴から覗いているみたい」
この現象を ケラレ と呼ぶ。双眼鏡が壊れているわけではなく、アイレリーフが足りていないことが原因だ。
メガネユーザーの双眼鏡選びは、たった1つの数値を確認するだけで大半が解決する。本稿ではその数値の意味を整理し、メガネ対応モデルを絞って取り上げる。
| メガネ対応の優先項目 | おすすめモデル | 価格 | アイレリーフ |
|---|---|---|---|
| コスパ最優先 | Vixen アリーナスポーツ M8×25 | ¥15,000 | 16.0mm |
| メガネ対応×防水×ポロプリズム | Kowa YF II 8×30 | ¥18,600 | 16.0mm |
| 広角×メガネ×万能 | Nikon Prostaff P7 8×30 | ¥18,300 | 15.4mm |
| 10倍×メガネ対応 | Nikon Prostaff P7 10×30 | ¥19,800 | 15.4mm |
| 暗所+防水+メガネ | Vixen アトレックII HR 8×32WP | ¥33,000前後 | 15.0mm |
眼鏡対応で高品質を求めるなら Kowa BDII-XD 8×32(¥45,000前後、アイポイント約15.5mm)も有力候補。
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アイレリーフとは何か
アイレリーフ(Eye Relief) とは、接眼レンズの最終面から全視野が見える位置(アイポイント)までの距離のこと。単位はmm。JIS B 7121の双眼鏡規格にも定義されている光学パラメータだ。
裸眼なら接眼レンズにぴったり目を近づけられるので、アイレリーフが10mmでも問題は出ない。
ところがメガネをかけると、レンズの厚み+フレームの分だけ目が接眼レンズから離れる。この距離は概ね 12〜15mm。
アイレリーフが12mmの双眼鏡をメガネで覗くと、目がアイポイントの外側に位置してしまい、視野の周辺が黒く欠ける。これがケラレだ。
もう一段噛み砕くと、双眼鏡の接眼レンズから出てくる光は「射出瞳」と呼ばれる円形の光束として、ある位置で集中する。この位置がアイポイントで、目の瞳をここに合わせれば全視野が見える。裸眼なら眼を接眼レンズに限りなく近づけられるが、メガネをかけると強制的に目がその位置から遠ざかってしまう。アイレリーフはその「集中する位置まで、どのくらい離れていても大丈夫か」を示す数値だ。
なぜ「15mm以上」が基準なのか
メガネのレンズ面から目までの距離(頂点間距離)は約12mm。これにフレームの厚みを数mm加えると、メガネ着用時に必要な最低アイレリーフは 14〜15mm に着地する。
ただしこれはギリギリの数値で、フレーム形状や顔に当てる角度でも前後する。余裕を持って 15mm以上、16mm以上ならほぼすべてのメガネで快適に使える。
| アイレリーフ | メガネでの使用感 | 代表モデル |
|---|---|---|
| 10〜12mm | ケラレが大きい。実用的ではない | Nikon ACULON T02(10.3mm) |
| 13〜14mm | 軽いケラレあり。フレームの形状次第 | Pentax UP 8×21(13.0mm) |
| 15〜16mm | 快適に使える | Nikon P7 8×30(15.4mm)、Kowa YF II(16mm) |
| 17mm以上 | 余裕を持って全視野が見える | Nikon Monarch M7(17.1mm) |
| 20mm以上 | ゴーグル型の厚いメガネでも問題なし | 特殊設計機種 |
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アイレリーフ別の実際の見え方
アイレリーフの数値差が、使用感にどう響くか。計算式だけでなく、シーン別の差として押さえておきたい。
用途×メガネ対応モデルの組み合わせマトリクス
| 用途 | 要求アイレリーフ | 推奨モデル | 理由 |
|---|---|---|---|
| コンサート(アリーナ前方) | 15mm以上 | Kowa YF II 8×30 | 明るく広角。照明環境でも使いやすい |
| ドーム公演(後方・天井) | 15mm以上(10倍推奨) | Nikon P7 10×30 | 10倍でアイレリーフ確保できる希少モデル |
| 野外フェス・雨天 | 15mm以上+防水 | アトレックII HR 8×32WP | 防水かつアイレリーフ15.0mm |
| バードウォッチング | 15mm以上+瞳径4mm以上 | Kowa BDII-XD 8×32 | 色再現・解像とメガネ対応の両立 |
| 競馬・スポーツ観戦 | 15mm以上 | Vixen アリーナスポーツ M8×25 | コスパ重視、オーロラコートでナイターにも対応 |
| 一般旅行・観光 | 15mm以上 | Nikon P7 8×30 | 広角で使いやすく防水 |
| 宝塚・観劇 | 15mm以上 | Kowa YF II 8×30 | 舞台演出の光でもフレアが出にくい |
| 星空観察 | 15mm以上+瞳径5mm以上 | Nikon Monarch M7 8×42 | アイレリーフ17.1mm、瞳径5.25mm |
アイレリーフ別「ケラレの体感差」
コンサートで前方アリーナ席(ステージまで20m)からメガネで双眼鏡を使う場面を想定する。
アイレリーフ10mm(ケラレ大):視野の外周30〜40%が黒く欠ける。推しの顔全体を見ようとすると、顔が視野の端に来た瞬間にブラックアウト。目の位置をミリ単位で調整しなければならず、公演に集中しにくい。
アイレリーフ14mm(軽微ケラレ):視野の端10〜15%程度が欠ける。中央付近を見ている間は支障なし。視野の隅にいる推しを追おうとするとケラレが気になり始める。
アイレリーフ16mm(ケラレなし):視野の端から端まできれいに見える。双眼鏡を自然に構えるだけで、ケラレを意識せず推しを追える。
この差は、同じ8倍・同じ口径でも「アイレリーフ」という1つの数値で完全に分かれる。
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ケラレとは具体的にどう見えるのか
ケラレを体感したことがない人向けに、もう少し噛み砕いておく。
アイレリーフが十分な双眼鏡で覗くと、視野は端から端まできれいに見える。像が視野全体に広がり、双眼鏡を覗いていることを忘れるような没入感が出る。
一方、アイレリーフが不足している双眼鏡をメガネで覗くと、こうなる。
- 視野の周辺部が黒く欠ける(丸い穴から覗いている感じ)
- 見える範囲が本来の60〜70%程度に狭くなる
- 目の位置を少し動かすだけで見え方が大きく変わり、安定しない
- 一度「使いにくい」と感じると、双眼鏡自体を使わなくなる
これは光学的な限界で、フォーカスを合わせても、接眼レンズの見口を調整しても解消しない。ケラレが起きている状態でいくら倍率や光学品質を上げても、見え方は改善されない。
別の言い方をすると、ケラレが出ている双眼鏡は「もともとの設計視野の60〜70%しか使えない」状態。8倍で本来の実視界が8°のはずが、実質5〜6°まで狭まる計算になる。コンサートやスポーツ観戦でステージや選手を追うときに、この狭さは致命的な不満につながる。
フレームタイプ別のケラレ発生リスク
すべてのメガネで同じ影響が出るわけではない。フレームの種類と形状によって、必要なアイレリーフは前後する。
| メガネのタイプ | 目と接眼レンズの距離 | 必要アイレリーフの目安 |
|---|---|---|
| 細フレーム・ハーフリム | 12〜13mm | 14mm以上でほぼ問題なし |
| 標準フレーム(太め) | 13〜14mm | 15mm以上推奨 |
| スポーツ用(密着タイプ) | 11〜12mm | 13mm以上でOKの場合が多い |
| 大型フレーム(サーモント等) | 14〜16mm | 16mm以上推奨 |
| プログレッシブレンズ(遠近両用) | 遠用部分の位置次第 | 16mm以上推奨+実機試用必須 |
| 老眼鏡(reading glasses) | 標準フレーム同等 | 15mm以上推奨 |
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メガネユーザーの3つのチェックポイント
双眼鏡を買う前に、以下の3点を確認したい。
1. アイレリーフ15mm以上
最も重要な数値。Nikon、Vixen、Kowa等の主要メーカーは公式サイトやスペック表に必ず記載している。「ハイアイポイント」「High Eye Relief」「長いアイレリーフ」という表記があるモデルは、アイレリーフが長い設計だ。
スペック表にアイレリーフの記載がないモデルは避けたほうがよい。記載する自信のないスペックは短いケースが多い。
ネット通販で買うときは、商品ページの「スペック表」または「商品説明文」にアイレリーフ(eye relief)の数値が明記されているかを確認。「アイポイント○mm」という表記も同義だ。数値が書かれていない場合は、購入前にメーカーのサポートに問い合わせるか、実店舗で試してから買うのが無難。
2. 見口(アイカップ)がターンスリップ式
双眼鏡の接眼レンズ周りのゴム部品を「見口」または「アイカップ」と呼ぶ。メガネユーザーは、この見口を折り返したり回転させて、目とレンズの距離を調整する。
- ターンスリップ式(回転繰り出し式):回転させて段階的に高さを変えられる。最も使い勝手がよい。メガネ着用時は繰り込んで(低くして)使う
- 折り返し式:ゴムを折り返すだけ。安価なモデルに多く、調整の自由度が低い
1万円以上のモデルはほぼターンスリップ式だが、低価格帯では折り返し式が残っている。
ターンスリップ式は通常2〜3段階で高さを調整可能。裸眼時は最も高い位置(アイレリーフが最大になる状態)、メガネ着用時は最も低い位置(繰り込んだ状態)で使うのが基本だ。ただしアイレリーフが15mm以上あれば、繰り込まなくてもケラレずに使えるモデルもある。
3. 重量とホールドのしやすさ
メガネをかけている分、双眼鏡を顔に押し当てて安定させにくい。軽量であること、グリップしやすい形状であることが、裸眼ユーザー以上に効いてくる。
500g以上の双眼鏡を長時間持つのは、メガネユーザーには負担が大きい。400g台までを目安にしたい。ハーネス型ストラップを使えば500g前後でも負担を大きく抑えられる。
双眼鏡をメガネに軽く当てるだけでは安定しない場合、「体に対して肘を固定し、双眼鏡を目に当てる」持ち方が有効。体を土台にして双眼鏡を安定させると、メガネが邪魔でもブレを抑えられる。
メガネユーザーの使い方テクニック
アイレリーフが確保された双眼鏡でも、持ち方やストラップの選び方でさらに使いやすくなる。
ストラップの選び方:ハーネス型が有力
メガネ着用で双眼鏡を目に当てるとき、首かけ式ストラップでは双眼鏡が顔からずれやすい。ハーネス型(胸に固定するタイプ)は双眼鏡の重さを胸・肩で分散でき、本体が常に胸元にあるため、構えるときに安定した起点になる。Op/Tech USAやBlackrapidのハーネスストラップ(¥3,000〜5,000)は、メガネユーザーにこそ投資価値がある。
目幅(瞳孔間距離)の調整
双眼鏡には左右の接眼部を広げたり縮めたりする機構(ヒンジ部分)がある。メガネをかけた状態でも目幅を合わせることが重要で、この調整が甘いと視野の中心が二重になる。メガネを掛けた状態での合わせ直しを忘れずに。
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おすすめ5モデル:アイレリーフ15mm以上のみ厳選
明るさ・防水・メガネ対応が揃ったポロプリズム機

- 倍率8倍
- 対物レンズ口径30mm
- 瞳径3.8mm
- アイレリーフ16.0mm
- 見かけ視界60.0°
- 重量475g
- 防水◯
Kowaは日本の光学メーカーで、スポッティングスコープ(フィールドスコープ)では世界的に知られる存在だ。双眼鏡ではNikonやVixenほどの知名度はないが、YF IIシリーズは光学品質と価格のバランスがよい。
アイレリーフ16mmは、ほとんどのメガネで快適に全視野が見えるライン。フレームが特別に厚い場合はわずかにケラレが出る可能性はあるが、一般的なメガネなら問題ない。
ポロプリズム方式は光学設計上、ダハプリズムより光の透過効率が高く、同価格帯のダハプリズム機より「明るくシャープ」に感じる傾向がある。コーティングに頼らずに高い光透過率を確保できるため、価格対光学品質の比で優位。バードウォッチングや競馬も兼用したいメガネユーザーに向く。
重量475gについて:ポロプリズムはダハプリズムより大型になりやすく、YF II 8×30は475g。メガネとの併用で長時間使うなら、ハーネス型ストラップとの組み合わせが推奨。首かけのみだと30分程度で首への負担を感じ始める。
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コスパ重視のメガネ対応モデル
「1万円台」「メガネ対応」「コンサートにも使える」を同時に満たす、貴重な1台。290gという軽さはメガネとの併用でも疲れにくい。
口径25mm・瞳径3.1mmのため、暗い場所では物足りなさが出る。それでも予算を抑えつつメガネ対応が欲しいなら有力な候補だ。
オーロラコートはVixenが開発した特殊コーティングで、ナイター照明のフレア(光の滲み)を抑える。野球ナイターや室内スポーツ観戦でまぶしい照明がある場面で、コントラストを保ったクリアな視界を維持しやすい。コンサートの照明演出でも光がにじみにくく、推しの顔の細部が見やすい。
290gという軽さの意味:Kowa YF II(475g)と比べると185gの差。コンサートでは双眼鏡を使わない時間も多く、首にかけての総重量は累積疲労に直結する。「双眼鏡を持つのが疲れる」というメガネユーザーにとって、290gは大きなアドバンテージ。
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広角+ハイアイポイントの高性能モデル

- 倍率8倍
- 対物レンズ口径30mm
- 瞳径3.8mm
- 見かけ視界62.6°
- アイレリーフ15.4mm
- 重量485g
- コーティングフルマルチコート + 位相補正
- 防水◯(1m/10分・窒素充填)
広角設計とハイアイポイントの両立は、光学設計上かなり難しい。視野を広げると接眼レンズの設計が複雑になり、アイレリーフが短くなりやすい。Prostaff P7はこの二律背反をうまくクリアしている。
アイレリーフ15.4mmは合格ラインだが、余裕があるとは言いがたい。メガネのフレームが厚い場合は実機で覗いて確認したい。ターンスリップ式のアイカップを最も低い位置にすれば、アイレリーフを最大限活かせる。
位相補正コーティング(PCコーティング)が施されており、ダハプリズムで生じる位相のズレを補正して解像力を高めている。同価格帯のダハプリズム機でも位相補正のないものは解像力が落ちるが、Prostaff P7はこの点で妥協がない。
見かけ視界62.6°の実用的な意味:実視界は7.8°(62.6÷8)、1000m先での視野幅は約136m。スタジアムの内野席(ホームベースまで50〜80m程度)なら、ピッチャーとバッターを同じ視野に収められる広さ。宝塚の舞台ではステージ全体を視野に入れながら主演を追える。
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10倍が必要なメガネユーザーに
倍率を上げると一般にアイレリーフは短くなる。光学設計上の制約で、接眼レンズの焦点距離が短くなるほどアイレリーフも短くなる傾向だ。10倍でアイレリーフ15.4mmを確保しているのは、Nikonの設計力の高さを示している。
ドームコンサートの天井席でメガネをかけているファンにとって、このモデルはほぼ唯一の現実的な選択肢。10倍で200m先のステージの推しを見たい、かつメガネで快適に使いたい、という条件を満たすモデルはそれほど多くない。
10倍での手ぶれ増幅に注意:10倍双眼鏡は8倍より手ぶれが増幅されやすく、メガネをかけているとさらに安定させにくい。脇を締め、肘を体に固定し、できれば座席の背もたれや壁を支点にするなど、安定させる工夫がいる。スタジアムや会場の手すりを軽く支えにするだけで像のブレは大きく改善する。
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防水+ハイアイポイントのオールラウンダー
瞳径4.0mmは、コンサートの暗い会場でも明るく見えるライン。これに防水とアイレリーフ15.0mmが加わるので、「メガネで雨の野外フェス」というシーンでも安心。390gと軽量で長時間の使用でも負担が少ない。
パーフェクトフーリーマルチコートを全レンズ面に採用し、光の透過率を確保した設計。コーティングの質は像の鮮明さと明るさに直結するため、暗い会場での見え方が変わってくる。宝塚大劇場やドーム公演のような「暗転が多い」会場で、コーティングの差を実感しやすい。
アイレリーフ15.0mmの許容範囲:このモデルのアイレリーフは15.0mmと、紹介モデル中では最短。ただし390gという軽さがメガネとの組み合わせで安定した持ち方をしやすい形状と相まって、実用上のケラレは感じにくい。フレームが細いメガネや標準的なメガネなら問題なく使える。フレームが太く密着型の場合は、念のため実機で確認したい。
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Kowa BDII-XD 8×32も候補として
Kowa BDII-XD 8×32(¥45,000前後) は、Kowaが独自開発したXD(Xtra-low Dispersion)ガラスを採用したハイポジション(高アイポイント)設計の上位機種。アイポイント約15.5mmでメガネ対応し、色収差が少なくバードウォッチングでも評価が高い。
XDガラスはEDガラスと同等の色収差抑制性能を持つ。バードウォッチングでの羽の色識別、コンサートでの照明の色再現性、競馬での馬体の毛色確認など、色が重要なあらゆるシーンでXDガラスの恩恵を受けられる。
「メガネで使えて、光学品質を妥協したくない」場合は、Vixen アトレックII HR 8×32WPとKowa BDII-XD 8×32の2択。アイレリーフの差(15.0mm vs 15.5mm)は小さいが、Kowa BDII-XDの色再現性と解像力は予算が許せば選ぶ価値がある。
Nikon Monarch M7 8×42:最上位のメガネ対応機
予算に余裕があり、メガネ対応と高水準の光学品質を両立したい場合は Nikon Monarch M7 8×42(¥65,000前後) が候補。アイレリーフ17.1mmという余裕あるハイアイポイント設計で、どんなフレームのメガネでもケラレが起きにくい。
EDガラス(Extra-low Dispersion、蛍石相当)採用で色収差が極めて少なく、対物レンズ42mmで射出瞳径5.25mm(明るさ指数27.6)の明るさを確保。IPX7防水(水深1mで30分)、重量623gとこのスペックにしては手持ち可能な重さに収まる。
ただし623gはメガネとの組み合わせで長時間持つには重め。ハーネス型ストラップとの併用が望ましい。17.1mmのアイレリーフは、メガネをかけた状態でターンスリップを最低位にしなくても全視野が見えるため、実際の使用感は快適だ。
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「メガネを外して覗く」という選択肢
ここまでアイレリーフの重要性を見てきたが、「メガネを外して双眼鏡を覗く」という選択肢もある。
双眼鏡にはピント調整(フォーカス)機能があるため、近視や遠視はある程度フォーカスで補正できる。メガネを外して覗いても、フォーカスを合わせればピントが合う場合がある。
ただし以下のケースでは対応できない。
- 乱視が強い場合:双眼鏡のフォーカスでは乱視の補正ができず、像がぼやける
- 左右の視力差が大きい場合:視度調整リングである程度補正できるが限界がある
- 着脱が面倒な場面:コンサート中にメガネを付け外しするのは現実的でない
乱視がなく、着脱が気にならないなら、メガネを外して使うことでアイレリーフの制約から解放される。ただ多くの場合は「メガネ対応の双眼鏡を選ぶ」ほうがストレスが少ない。
なおコンタクトレンズを装用している場合は、コンタクトが角膜に直接乗るため、目と双眼鏡の距離は裸眼と変わらない。アイレリーフ10mmのモデルでも問題なく使える。「コンサート用にコンタクトに変える」という運用も現実的だ。
コンタクトレンズ vs メガネ:使い分けのシーン別判断
| シーン | コンタクトで行く場合 | メガネで行く場合 |
|---|---|---|
| 日帰りコンサート | コンタクト向き(アイレリーフ制約なし) | メガネ対応機(15mm以上)必須 |
| 野外フェス・雨天 | コンタクトは目に悪い。メガネが安全 | 防水+メガネ対応機が必要 |
| バードウォッチング(長時間) | コンタクトは乾燥で辛くなる場合あり | メガネ対応機+ハーネス推奨 |
| 夜間イベント・花火 | コンタクトOK | 瞳径4mm以上+アイレリーフ15mm以上 |
| 旅行・観光(複数日) | コンタクトは紛失リスク | メガネで安全に。対応機を選ぶ |
花粉症シーズンや目が乾きやすい人は、長時間のコンサートや屋外イベントでコンタクトが辛くなることがある。そうしたケースでは「メガネで快適に使える双眼鏡」を用意しておくと、コンタクト・メガネどちらでも安心だ。
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選び方の早見表
| あなたの条件 | おすすめ | アイレリーフ | 価格 |
|---|---|---|---|
| コスパ重視 | アリーナスポーツ M8×25 | 16.0mm | ¥15,000 |
| メガネ+防水+ポロプリズム | Kowa YF II 8×30 | 16.0mm | ¥18,600 |
| 広角が欲しい | Prostaff P7 8×30 | 15.4mm | ¥18,300 |
| 10倍が必要 | Prostaff P7 10×30 | 15.4mm | ¥19,800 |
| 暗所+防水+メガネ | アトレックII HR 8×32WP | 15.0mm | ¥33,000前後 |
| 光学品質最優先(中級) | Kowa BDII-XD 8×32 | 約15.5mm | ¥45,000前後 |
| 最高のメガネ対応(上級) | Nikon Monarch M7 8×42 | 17.1mm | ¥65,000前後 |
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まとめ:メガネユーザーはまずアイレリーフを確認
双眼鏡選びにはスペックが多いが、メガネユーザーにとって最重要はアイレリーフ。この1つの数値が15mm以上なら、メガネでも快適に使える。
迷ったら Kowa YF II 8x30。アイレリーフ16mmに加え、ポロプリズムの明るくシャープな像と防水性能で実用面も優秀。予算を抑えたいなら Vixen アリーナスポーツ M8×25。約15,000円で同じくアイレリーフ16mmを確保し、コスパに優れる。
どちらを選んでも、「メガネだから双眼鏡は楽しめない」という思い込みは覆る。
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よくある質問
アイレリーフが足りない双眼鏡を使ったらどうなりますか?
視野の周辺部が黒く欠ける「ケラレ」が起きる。 本来の全視野の60〜70%程度しか見えなくなり、目の位置を少し動かすだけで見え方が変わって安定しない。ケラレは双眼鏡の故障ではなく光学的な限界のため、調整しても改善されない。アイレリーフ15mm以上のモデルを選べば解決する。
アイレリーフ12mmのモデルをメガネ(頂点間距離13mm)で使うと、目がアイポイントより1mm外側に位置する。この1mmのズレが視野全体に黒い「枠」を作り出し、使い物にならない状態になる。安い双眼鏡でメガネを使っている人が「全然見えない」と感じる原因の大半がこれだ。
コンタクトレンズを使っている場合、アイレリーフは気にしなくていいですか?
コンタクトレンズなら裸眼と同様。 コンタクトは角膜上に直接乗るため、目と接眼レンズの間に距離が生じない。アイレリーフ10mmのモデルでも快適に使える。「コンタクトを外したときの予備としてメガネで使う可能性がある」場合のみ、アイレリーフ15mm以上を選んでおくと安心。
ソフトコンタクトレンズユーザーは、長時間の野外イベントや夏フェスでは乾燥による不快感が問題になることがある。「コンタクトでもメガネでも使える双眼鏡」としてアイレリーフ15mm以上を選んでおくと、季節・体調に関わらず使い回せる。
老眼鏡をかけたまま双眼鏡を使えますか?
アイレリーフ15mm以上のモデルなら使える。 老眼鏡は近用度数のため、遠くを見る双眼鏡とは相性が複雑。(1)老眼鏡を外して双眼鏡のフォーカスを調整する、または(2)老眼鏡をかけたままアイレリーフ15mm以上のモデルを使う、の二択になる。乱視がなければ(1)のほうが選択肢が広がるが、着脱が面倒な場面では(2)がストレスが少ない。
老眼の場合、近方視力が落ちているため双眼鏡のフォーカスリングの細かい調整が見えにくいことがある。デジタル双眼鏡やオートフォーカス双眼鏡も選択肢だが、一般的な光学双眼鏡でも慣れれば問題ない。
スポーツ用メガネ(フレームが大きい)を使っています。15mmでも足りますか?
スポーツ用メガネはフレームが大きく眼に近い設計のものが多いため、15mmでも足りない場合がある。 16mm以上を選ぶか、実店舗で試してから買うのが確実。Kowa YF II 8×30(16mm)やVixen アリーナスポーツ M8×25(16mm)はスポーツ用メガネでも対応できるケースが多い。
スポーツ用メガネのうち「顔に密着しているタイプ(例:Adidas Sport Eye Glass等)」は、逆に頂点間距離が小さくなるため11〜12mm程度で済むこともある。自分のメガネと頂点間距離(フレーム前面から角膜頂点まで)を一度測ってみるとよい。
プログレッシブレンズ(遠近両用)をかけています。注意点はありますか?
プログレッシブレンズは視野によって度数が変わるため、双眼鏡のアイピースを覗く際に「遠用部分」が使えるかの確認が必要。 顎を上げたり引いたりしないと遠用部分に目線が来ない場合がある。試着してから買うか、モノカリ等のレンタルサービスで試してから決めるのが確実だ。アイレリーフ16mm以上のモデルは目の位置のずれに対する余裕が大きく、プログレッシブレンズでも使いやすい傾向。
プログレッシブレンズの遠用部分は通常レンズの上部にある。双眼鏡を使う際は視線をやや上に向けて遠用部分でアイピースを覗くと、ピントが合いやすい。Kowa YF II(16mm)やVixenアリーナスポーツ(16mm)は目の位置のズレに対する許容範囲が広く、プログレッシブレンズ使用者にも向く。
双眼鏡を購入する前に試す方法はありますか?
実店舗での試用とレンタルサービスの2つが現実的。 ヨドバシカメラやビックカメラの光学コーナーでは多くのモデルを試せる。自分のメガネをかけたまま覗かせてもらい、ケラレがないか確認するのが最も確実だ。モノカリ等のレンタルサービスを使えば、実際の使用環境(コンサートや競馬場)で試してから購入を判断できる。1回のレンタル費用(¥2,000〜5,000)は、高額な双眼鏡を買って後悔するリスクを考えると割が合う。
実店舗でのチェックポイントは、(1)自分のメガネをかけたまま覗いてケラレがないか、(2)ターンスリップ式アイカップを最低位にしても全視野が見えるか、(3)左右の目幅調整が自分の顔に合うか、(4)重さを実際に持って長時間使えそうか、の4点だ。


