天体望遠鏡 — 屈折式 vs 反射式

屈折式 vs 反射式 天体望遠鏡 徹底比較|光学的な違い・メンテナンス・向いている対象【2026年版】

屈折式と反射式の天体望遠鏡を光学原理から実用面まで徹底比較。色収差と中央遮蔽の影響、メンテナンス頻度、月・惑星・星雲それぞれに向いている方式を解説します。

updated: 2026-04-10

「どっちがいいの?」に対する結論

先に答えを書きます。

この結論の根拠を、以下で光学的な原理から解説します。

光学的な違い

屈折式:レンズで光を集める

屈折式はガラスレンズの屈折で光を焦点に集めます。対物レンズ → 光が筒を通過 → 接眼レンズという単純な光路です。

光路を遮るものがない のが最大の特徴です。入射した光が100%焦点に向かうため(コーティングや吸収による損失を除く)、コントラストの高いシャープな像が得られます。

反射式:鏡で光を集める

反射式(ニュートン式)は放物面鏡で光を反射し、焦点の手前に置いた斜鏡(副鏡)で横に光を取り出します。

副鏡が光路の中央を遮蔽する のが構造上の弱点です。遮蔽率は口径の20-35%程度で、これにより回折が発生し、特に低コントラストの対象(惑星の縞模様など)の見え方に影響します。

色収差:屈折式の弱点

ガラスレンズは波長ごとに屈折率が異なるため、色によって焦点位置がずれます。これが色収差です。

アクロマート(通常の2枚玉レンズ)は赤と青の2色を補正しますが、完全ではありません。明るい星や惑星の周囲に紫色のにじみ(色ハロ)が見えることがあります。

アポクロマート(ED/SDガラス使用の3枚玉)は3色以上を補正し、色収差がほぼゼロになります。ただし価格は2-5倍に跳ね上がります。

反射式は色収差がゼロです。 鏡面反射は波長に依存しないため、原理的に色のにじみが発生しません。これは反射式の大きなアドバンテージです。

中央遮蔽:反射式の弱点

反射式の副鏡は光路の中心を遮ります。遮蔽された面積分だけ光が失われるだけでなく、回折環(エアリーディスク)のコントラストが低下します。

数値で示すと、遮蔽率30%の反射式は、無遮蔽の屈折式と比較してMTF(コントラスト伝達関数)が低周波側で約15-20%低下します。これは惑星の縞模様や月面の微細な構造を見る際に「なんとなくぼやける」感覚として表れます。

口径130mmの反射式(遮蔽30%)のコントラストは、口径100mm程度の屈折式と同等 という見方もあります。ただし集光力では130mmが圧倒的に上なので、暗い天体では反射式が有利です。

球面収差とコマ収差

屈折式(アクロマート) は球面収差が少なく、光軸上の像は良好です。ただし視野周辺では像面湾曲が出ることがあります。

反射式(ニュートン式) は放物面鏡で球面収差を補正していますが、光軸から外れた位置ではコマ収差(星像が彗星のように尾を引く)が発生します。短焦点(F5以下)で顕著になります。

メンテナンスの違い

屈折式のメンテナンス

ほぼ不要です。 レンズは固定されており、光軸調整は必要ありません。定期的なメンテナンスは以下の程度です。

反射式のメンテナンス

光軸調整(コリメーション)が定期的に必要です。 車で運搬したり、鏡筒を傾けたりするだけで光軸がずれることがあります。

光軸調整は慣れれば5-10分で終わる作業ですが、初心者には最初のハードルが高いです。レーザーコリメーターという道具を使えば格段に楽になります(3,000〜5,000円)。

メンテナンス比較表

項目屈折式反射式
光軸調整不要定期的に必要
清掃頻度年に数回年に1-2回
温度順応15-30分30-60分
結露リスク低い(密閉構造)高い(鏡面露出)
再メッキ不要5-10年に1回
保管特別な配慮不要湿気に注意

向いている対象の比較

月面観測

屈折式が有利です。 月面は明るく高コントラストの対象なので、中央遮蔽による回折の影響が気になりやすい対象です。屈折式の遮蔽のないシャープな像は、月面の微細な構造の観察に向いています。

ただし口径の差が大きければ反射式でも十分です。口径80mmの屈折式と口径130mmの反射式なら、反射式の方が分解能で上回ります。

惑星観測

屈折式が有利です。 惑星の縞模様や輪は低コントラストの構造なので、中央遮蔽の影響を最も受けます。同じ口径なら屈折式の方が惑星の細部がくっきり見えます。

マクストフカセグレンも惑星に向いています。副鏡の遮蔽はニュートン反射より小さく、屈折式に近いコントラストが得られます。

星雲・星団

反射式が有利です。 星雲の観測は集光力がモノを言います。同じ予算で反射式は屈折式の1.5-2倍の口径が手に入るため、暗い天体の見え方で圧倒的に有利です。

口径80mmの屈折式(集光力131倍)vs 口径130mmの反射式(集光力345倍)。集光力が2.6倍違えば、見える星雲の数が段違いに増えます。

二重星

屈折式が有利です。 二重星の分離には分解能とコントラストの両方が必要です。同じ口径なら屈折式がシャープで、狭い二重星の分離に有利です。

天体写真

対象によります。 惑星写真は屈折式(特にアポクロマート)の色収差のない像が有利。星雲写真は大口径・短焦点の反射式(F4-F5)が露光時間を短縮できて有利です。

価格の比較

口径屈折式(アクロマート)屈折式(アポクロマート)反射式(ニュートン)
60mm¥15,000-25,000--
70mm¥20,000-30,000--
80mm¥30,000-50,000¥80,000-150,000-
100mm¥35,000-60,000¥100,000-200,000¥25,000-40,000
130mm¥80,000-120,000¥200,000-400,000¥30,000-50,000
200mm-¥500,000以上¥50,000-100,000

口径100mm以上で反射式のコスト優位が顕著になります。 口径200mmの反射式が5-10万円で手に入るのに対し、同口径の屈折式は事実上存在しません(あっても非常に高価で巨大)。

よくある質問

Q. カタディオプトリック式はどちらの仲間ですか?

レンズと鏡の両方を使うハイブリッドです。マクストフカセグレンは惑星向け(遮蔽が小さく高コントラスト)、シュミットカセグレンは汎用向け(コンパクトで自動導入との相性が良い)です。

Q. ドブソニアンは反射式ですか?

はい。ドブソニアンはニュートン式反射望遠鏡を簡易的な架台に載せたもので、大口径が安価に手に入ります。口径200mm以上を狙うなら最もコストパフォーマンスが高い選択肢です。

Q. 反射式の光軸調整は本当に初心者でもできますか?

YouTubeに多くの解説動画があります。最初は30分かかるかもしれませんが、3回やれば10分以内でできるようになります。レーザーコリメーター(3,000〜5,000円)を使えばさらに簡単です。

Q. 屈折式の色収差は本当に気になりますか?

F値が大きい(F10以上)アクロマートなら色収差はかなり抑えられます。短焦点(F6以下)のアクロマートは目立つことがあります。気になるならEDアポクロマートを選んでください。

あなたの条件に合った方式は?

条件おすすめ方式
初心者で月・惑星が見たい屈折式(80mm以上)
メンテナンスしたくない屈折式
予算内で最大口径が欲しい反射式
星雲・星団がメイン反射式(130mm以上)
コンパクトに惑星観測マクストフカセグレン
天体写真が目的対象による(本文参照)
1台で何でもやりたいカタディオプトリック

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